鯖矛(セイボウ)

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 勇者は宝箱を開けた。  宝箱の中には、なんと〝しめ鯖王の杖〟が入っていた! 勇者は〝しめ鯖王の杖〟を手に入れた!  勇者はメニュー画面を開いて、〝しめ鯖王の杖〟の説明文を読んだ。 『しめ鯖、それはかつて、あまたの居酒屋大将がその味の頂点を競う、店の看板メニューだった。──しめ鯖王が現れるまでは。しめ鯖王がしめ鯖に魔法の杖を振ると、この世で一番美味いしめ鯖になった。その味には、どんな板前も敵わなかった。やがて人々は、しめ鯖王のしめ鯖しか食べられなくなった。そして事件が起こった。しめ鯖王の魔法の杖が、行方知れずになってしまったのだ。しめ鯖王国のサバたちは困惑した。話し合いの末、国王が杖を取り戻すそのときまで、サバたちは冷凍睡眠で未来を待つことに決めた。この世で一番美味いしめ鯖になるために、サバたちは冷凍庫に入り、永い永い眠りについた』  勇者はとりあえずセーブして、しめ鯖王国に向かった。 しめ鯖王の城、謁見の間にしめ鯖王はいた。玉座に座ったしめ鯖王が言った。 「おお、勇者よ。よくぞまいられました。あなたが現れることは、天よりのお告げでわかっていました」  勇者は〝しめ鯖王の杖〟をしめ鯖王に返した。 「あぁ、なんということでしょう……。これはまさしく、わたしが失くしていた魔法の杖。これでまた、美味しいしめ鯖をつくることができるでしょう」  その晩、城で祝宴が開かれて、国中のしめ鯖ファンたちが喜びを分かちあった。勇者はこの世で一番美味いしめ鯖を堪能した。  翌朝、しめ鯖王は勇者に言った。 「勇者よ。冷凍庫の中から、この国でもっとも旬なサバを選びました。そのサバで、わが国に伝わる最強の武器、〝鯖矛(セイボウ)〟をつくらせました。どうぞ、あなたの旅に役立ててください」  勇者は〝鯖矛〟を手に入れた!  勇者はメニュー画面を開いて、〝鯖矛〟の説明文を読んだ。 『煌く蒼海をそのまま宝石にしたような、冷凍のサバを穂先に使用した伝説の矛。サバの中でも、ヒレの切れ味を極限まで研ぎ澄ました最強の戦士が選ばれた。攻撃力三百八十』  勇者は〝鯖矛〟を装備した。勇者はセーブして、さっそく魔王城に向かった。
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