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爆風と火球がすべてを焼き尽くしてしまった後、静寂が戻ってきた。周りを見回してみても何もなかった。キノコ雲の残骸が、空をまだ漂っている。
今のは、何だったんだろうか。私はしばし考えて、でも考えるのをやめた。
私のそばにいた憎いAが居なくなったんだ。
私を蹂躙する恐ろしいAが居なくなったんだ。
これでやっと一息つける、と、火照った体を支えて呟いた。
そして、私は腹部がごっそりなくなっていることに気が付いた。
それに、まだ貧血気味だということにも気づいた。ああ、どれほどの我儘を奴は私にしてきたんだろう。足りなくなった血が元に戻るまで、髪が生え治るまで、目がまた透き通った青を取り戻すまで、どれくらいかかるだろうか。
わからないけど、でももう壊されることはないかな。と思った。
終
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