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そう、こういう声を出してしまうと、暴力はなぜかヒートアップしてくる、ということに最近気づいた。とりあえず鞭が体を打ち続けている間は、体をその痛みに慣らして、心を別の場所へと飛ばして守らなければ。直ぐに次の鞭がまた勢いよく飛んでくるのが見え、私は息をつく間もなく目を閉じた。
Aはある日、私のことを「アイナ」と呼ぶようになった。
小さかったはずのAはとうに私を見下ろしていた。
この転換点を私は衝撃をもって迎えた。Aが思春期になったのだということを悟り、少し嬉しく思ったが、同時にAには重大な変化が起こっていた。それは、認識の拡大だった。私がアイナという、ただのちっぽけな存在であると、気づいたということだった。
それ以来Aは私をまるで玩具であるかのように、扱うようになった。この時、私は今まで、果たしてAに対してそんなひどい扱いをしてきたのだろうか?と自問したことを覚えている。その時の答えは、そうかもしれない、だった。今は全くそうではない。
初めのうちは、時々、Aが殴ったり、蹴ったりしてきただけだった。大抵Aは疲弊した表情をしていたから、外で何かがあって、その腹いせを私にしてきているのだろう、と思った。痛かったけれど、成長の過程で通る道だ、仕方ないと我慢していた当時の私に、今何かを伝えられるとしたら、まだ暴力が柔いうちに、直ぐにでもAを殺してくれ、ということだろうか。
そのうちだんだんAの利己的な欲望が私への暴力の主体となった。
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