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「なに、してるの」
「アイナの血を取ってるだけだ」
「…なんで」
「欲しいからさ」
この程度の回答しか返ってこないことは最初からわかっていたけれど、血を抜かれる、これは私の命に直接関わる深刻な問題だ。私は焦った。どんどん貧血になっていく。Aは傷口から少し零れた私の血を指でかすり取って、口のほうへ運んでいる。猶予はない。渾身の力を込めて、叫んだ。
「やめて!!」
注射針が抜けた。拍子抜けしたような空気音がする。
私は全身の力が抜けてぐったりしてしまった。はッ、と唾を吐く音が聞こえ、また強く殴られ、蹴られて、私は床に転がった。いったい何のために、血を抜くんだろう?意味も解らぬまま、また意識が飛んだ。
…時折優しさを見せるから、Aは憎い。
こうやって酷い目に遭った後で目を覚ますのは、決まって温かいベッドの上だ。むろん、奴が気を失った私を引き摺って行って、寝かせているに違いない。ひりひりと痛む傷には、(申し訳程度に、とはいえ)包帯がまかれて、薬が塗ってあったりするものだ。
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