死刑よりも残酷な罰が、この世にはある。

14/14
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
(すっかり遅くなったな) 会社を出て、地下鉄駅に駆け込もうとすると、初老の女がゆっくりと近づいてきた。 (誰だ? 薄気味悪いババアだな) 走り抜けようとすると、女が近寄ってきた。 「あの、すみません。大興の方ですよね。皮武良さんという方、知りませんか?」 嫌な予感がする。まさか、こいつ。 「私は、凍水という者ですが。私の家に、これが遺されていて」 女は、ノートを差し出し、あるページを開いた。 (凍水の女房か。まさか、ばれたとかないよな)  オレは、シラを切った。 「さぁ」 「今朝、変な人が『旦那のオレを忘れたのか!』と怒鳴って、家に居座ってて」  オレは、つい話を聞いてしまった。 「警察に通報してください。急いでるんで」 「ええ、警察に連絡したら、大慌てで出て行ってしまって。そのあと、電車に飛び込んだらしくて」  そういう顛末だったかと、オレは合点がいった。 「それ、見せてもらえませんか?」  オレはノートを奪い取ろうとした。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!