100人目の、リアルアカ「BAN」!

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 出社すると、出入口のセキュリティゲートで何やら騒動があって、騒がしい。  白髪交じりの初老の男が一人、わめいている。 「だから、お前は営業第2課長のオレを知らんのか!」 「ですからお客様、受付でお名前と訪問部署をご記入……」 「黙れ! 昨日までは、このカードで確かに通れたんだ!」  凍水だった。ICチップ社員証を振りかざして、女性社員を怒鳴り付けている。 「課長じゃないですか、どうかしたんですか?」 「お、皮武良(かわむら)じゃないか。ちょうど良いところに。この女が……」  凍水が、オレに話しかけた時、女性社員が涙目でカットインした。 「皮武良課長! 助けてください! この人、社員証偽造して強引に入ろうとするんです!」  ……皮武良、課長???  課長はコイツ、凍水じゃねえの? 「いや、何かの間違い……」  オレは、自分の名刺を懐から取り出した。  大興商事 営業部  第2営業課長  皮武良安太郎 「は!?」  いつの間にか、オレの肩書が課長になっていた。  タッタッタッタッタ 「ちょっと、そこの人。警備室まで来てください」 「な、何をする! 警察を呼べ!」 「警察を呼ぶのは、こっちの方です。さ、こっちへ」  制服姿のガードマンが2人、凍水の脇を抱えて、半ば強引に引っ張って行った。 凍水は、半狂乱になってわめきながら、視界から消えうせた。 「ど、どういうことだ?」  訳が分からなかった。
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