100人目の、リアルアカ「BAN」！

　営業部に行くと、課長席に「皮武良課長」と、ネームプレートが出ていた。
（ちょ、マジかよ？）
　凍水のアカウントをBANしてやったからなのか？
　オレが、課長席でぼんやりと立っていると、女子社員の平山田が近寄ってきて、
「課長、印鑑お願いします」
　決裁書類を持ってきた。相変わらず、香水のニオイがきつい。
「課長って、オレ？」
　平山田は怪訝な顔をして、
「……ほかに、誰かいますか？」
　右頬をわずかに上げて、書類を突き出してきた。
　実はこいつ、オレと付き合っている。いわゆる「不倫」というヤツだ。
「あ、ああ。すまん、寝ぼけてて」
　オレはその場を取り繕って、肘掛けのある「課長の椅子」に座った。
（おかしい。誰も、凍水が課長だったことを覚えていないかのようだ。それどころか、オレが課長になっていることを、何事もなく受け入れている）
　内心、これが「アカウントをバンする」ことなのかと、気になった。