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――いいでしょう、ならまずは関係性というものを作らねばなりませんね。常日頃話すのであれば、少なくとも相応の関係性というものは必要かと。人間は我々と違って、そう言った繋がりを判断基準にすることも多いですし
――ふむ、正論ですね二号。なら……教師と生徒、と言うのは如何でしょう。私は二号よりも十年四カ月と七日早く製造されています。年の差のある二人ならば、私が教師を務め、生徒たる二号を教育する。この関係性は妥当でしょう
――いえ待ってください一号、それだと少し問題があります
ここで二号が待ったをかけた。
――確かに我々の製造日には十年四カ月と七日の差があります。ですが演算速度や記憶容量、他全ての機能においては、製造が後の私の方が勝っているのです。生徒側が教師よりも性能が高いというのは、人間の観点においてふさわしいことではないように思えますが?
――む……ふむ、正論ですね。では同じ理由で親子も却下せねばなりませんね、親とは子に教えるものであり、そうである以上、年が下である子の方が劣っていなくてはなりません
――ええ、そこで考慮するに、友人と言うのはどうでしょうか。互いに過干渉せず、ただ暇つぶしに中身のない話をし、意味のないことをして遊ぶ。今回の条件には最も当てはまるのではないかと
二号の発案に一号はふむと考えこむ。と言ってもそこはコンピュータ。思考速度は人間のそれとは比にならず、一瞬で結論がはじき出される。
――それならば恋人の方がよいのではないでしょうか。友人とさしたる差はなく、それでいて互いの存在を強く求めあっている。我々はお互いに今相手を求めている状態です。それに友人よりも恋人の方が、人の心の機微を測るには相応しいと思われますが、如何でしょう、二号
――成程、正論ですね。ではこの瞬間より、我々は恋人同士、と言うことでやるとしましょう
かくして、コンピュータ二機による恋人ごっこが始まった。
最初は男女も割り当てるべきだという意見も出たが、それはすぐになくなった。人間の世界では、恋人は男女の関係に限定されないことが分かったからだ。
そして特別なことをやるわけでもない。ただ研究所内に複数組いる恋人の話などを盗み聞きしては、それらのシチュエーションを想像した会話を試しに自分たちでやってみる、と言う程度だった。
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