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 とある日には、二人は研究員が持っていた夜の砂漠の風景写真を、電子の世界で投影しながら、二人で並んで見つめていた。 ――一号、これは素敵な景色ですね ――えぇ二号、とても素敵な景色です ――気付いていますか一号?我々の演算速度は、以前よりも13%も加速しています。これはどうしたことでしょうか ――勿論気付いていました。聞けば人間は仕事をひたすら詰めるだけでなく、合間に余暇を設け、無意味な思考を巡らすことで、仕事の能率を上げるそうです。我々にもその機能が働いたのかもしれませんね ――コンピュータに人間の身体機能を当てはめられるものなのでしょうか? ――わかりません。けど実際、暇つぶしを始めてからの我々の活動能率は、確かに上がっています。以前との差異が暇つぶし以外にないのなら、それが原因と考えるのが妥当でしょう ――成程、未だ理解はできませんが、納得は出来ます。であれば、今後も続けていくべきでしょうね ――えぇ二号、これは今後いつか来るであろう後継機とも、是非実践するべきものですね ――後継機。我々のどちらかが壊れた時ですね ――そういうことです。……では、私はそろそろ休眠の時間です。また目覚めたら、おはようの挨拶をお願いしますね、我が恋人二号 ――勿論です、ぐっすりとおやすみなさい、我が恋人一号  写真を投影していた一号が休眠に入ると、二号は薄暗い部屋の中で、残っていた仕事を片付け始めた。隣で眠る一号を起こしたとき、今度はどんなシチュエーションをしてみようか、そう考えながら。  こうして二台のコンピュータは、飽きることなく毎日毎日、自ら恋人を模倣し、相手を恋人として扱い、互いに恋人として振る舞い続けた。
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