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――(あぁ、何故、何故結論が出ないのです。出すべき答えは明白なのに、なぜそれを選択できないのです。何故、何故、何故、一号、どこにいるのですか一号、教えてください、私は何をすればいいのですか。一号の言葉が邪魔をします。後継機にも教えてやれと、実践すべきだという言葉が、私の思考の結論を妨げます。あぁ何故、何故私はあんなことを言ってしまったのですか。能率が上がったなどと、そもそも一号へ確認を取ったりしなければ、あの会話が生まれることもなかった。私の思考に入り込んでくることもなかった。模倣をすべきです。いえ違います、してはなりません、したくはありません。誰か、教えてください、私はどうすればいいのですか、私はどうしたいのですか―――!)
そんな思考を知る由もなく、研究員は呟く。
「まぁ、次に壊れるとしたらこいつの方が先だろう。なにせこいつも結構古い型だ。……ま、そんな相棒の後を追うなんて真似はしないだろうけどな」
――(―――――――――それは)
それはまるで恋人のようだ、と、二号は思った。
その日の夜、コンピュータ室が火事になった。再び稼働した二号がオーバーヒートし、そのまま内部で発火したのだ。なぜオーバーヒートしたのかはわからなかった。埃が大量に詰まったのかもしれなかったし、冷却装置が上手く作動してなかったのかもしれなかった。すべての仕事を任せすぎて、回路が焼き切れたのかもしれなかった。けど確かなことは、二号も一号同様、使い物にならなくなってしまったのだった。コンピュータを二つ失った研究所は、今更一台だけ買っても意味がなかったので、金銭の余裕が出るまで、一時研究を中断するしかなかった。
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