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 その研究所跡は、放置されてから数年たっていた。結局以前使っていたグループは破産し、そのまま引き取り手もないまま廃棄されたのだ。  地下の一室、コンピュータ室だった場所には、二台のコンピュータだったものがある。  それはどちらも巨大な長方形の形をしていて、まるで大きなクローゼットのようでもあった。  だがそれらは、もうなんの機能も有してはいなかった。  完全に老朽しきった一台は、はるか昔から動きを止めていたことを示すように、外観にも、その中身にもすっかり埃が溜まっていて、劣化しきった本体は、随所にひびが入り、遠からず崩れ去るであろうことを示唆している。  もう一台は、真っ黒に焦げていた。側面に書かれていた「二号」の文字は完全に焼け焦げて見えなくなっており、中身はあちこちが溶けて使い物にならなくなっており、外観はやはり、焦げて劣化した部分からじわじわと崩れていた。  そんな二台は、綺麗に並んではいなかった。  焼け焦げた元二号は、下部が崩れたのか斜めにぐらりと傾いており、隣にある老朽化した元一号に、重心を預けるようにもたれ掛かっていた。  数百年後、互いに風化し崩れ去るまで、二台はずっとその体勢のまま、まるで恋人のように寄り添い合った。
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