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尚ちゃんは林にお礼を言って、車から降りていく。
私は改札に向かう尚ちゃんの隣を無言で歩く。
「美花、今日はありがとね。とっても勉強になったよ」
「うん……」
私は素っ気なく返事する。
気がついたら、もう改札の前まで来ていた。
「じゃあね。また明日」
──嫌だ。まだ、一緒にいたい。
今日の幸せな時間が脳裏によぎる。
溢れた思いは止まることを知らなくて。
「尚ちゃん……」
「何? 美花?」
「私、尚ちゃんのこと……好き……だよ」
自然に溢れたその言葉。
精一杯勇気を出した告白。
後先なんて考えずに告げた思い。
尚ちゃんは一瞬、目を見開いてから、いつもの笑顔で言った。
「私も美花のこと好きだよ」
『好き』。
きっとその言葉の意味は、友達として『好き』ということだろう。
私が恋愛感情を抱いていることなんて、尚ちゃんは少しも知らない。
私は俯いて言う。
「そういう好きじゃないよ……私は尚ちゃんに恋してるんだよ……」
顔を見なくても、息をのんで驚いていることがわかった。
顔をあげてしまったら、大切に育てたこの気持ちが壊れてしまうかもしれない。
そう思うと怖くなった。
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