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「やだなー美花-、冗談でしょ?」
いつもの無邪気な尚ちゃんの声が聞こえる。
私の世界は色を失って、時が止まった。
勇気を振り絞って、告白したのに。
冗談の一言で片づけた。
──どうして? 私のこの気持ちは、やっぱりいけないものだったの?
「ひどいよ……尚ちゃん……」
「え?」
目頭が熱くなって、涙がアスファルトに落ちていく。
「冗談なんかじゃないよ! どうして私の気持ちわかってくれないの!? もう……尚ちゃんなんか、大っ嫌い!」
「ちょっと、美花!」
引き止めようとする尚ちゃんを無視して、私は走り出す。
悲しみと悔しさが胸の中で混ざり合って、涙となって流れる。
突然に、走る私の腕を誰かが強く引いた。
「お嬢様」
「林……」
「どこに行かれるのですか?」
「放っておいてよ! 今は、一人になりたい気分なの……」
強気な態度を取っても、声は震えていた。
涙が止まらない。
林はハンカチを差し出して言う。
「お嬢様……とりあえず、家に戻りましょう。外は冷えてきましたし……」
「わかった……」
私は差し出されたハンカチを受け取って、涙を拭く。
車に戻ったとき、改札にはもう尚ちゃんの姿はなかった。
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