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「……!……お嬢様!聞いておられますか?」
「え?何?」
今は家で勉強中。
正体不明の感情について考えていたら執事の林に怒られた。
一条家──一条グループは大手化粧品メーカーだ。
両親は海外出張が多くほとんど家にいない。
そのため、私は両親と過ごす時間よりも執事の林と過ごす時間のほうが遥かに長かった。
「お嬢様、ぼーっとしてらしくありませんよ」
林は眉間にシワを寄せて言う。
アラサーだというのにその外見は男子高校生に間違えられるほど眉目秀麗だ。
いや、ただ単に童顔なだけかもしれない。
博識で知らないことのない林。
答えられなかった質問は今までに一度もない。
彼ならこの正体不明の感情を知っているかもしれない。
「ねぇ、林、質問があるの」
「何ですか?数学の質問以外は受け付けませんよ。お嬢様はいろいろなことを知りたがりすぎますから」
「ひとこと余計よ!真剣に聞いて!」
私が林を睨みつけると観念したように
「はいはい、分かりました。一つだけですよ」
と言った。
「あのね……尚ちゃんに初めての彼氏ができたの……それで…………」
私はここ最近の出来事と正体不明の感情について話した。
一通り話を聞き終えた林はいつになく真剣な表情でこう言った。
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