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尚ちゃんには堀部先輩という彼氏がいる。
私がこの気持ちに素直に動いたら修羅場になりかねない。
天に舞うような気分が一転、目の前が真っ暗になった。
溢れていた気持ちを瓶の中に固く閉ざす。
そうすると胸がチクチク痛んだ。
◇
翌日、複雑な感情で登校した。
お弁当の時間だけはいつものように過ごしてくれる尚ちゃん。
今日は心なしか会話が少ない気がする。
「美花、大丈夫?」
「え?何が?」
「今日あんまりしゃべんないなーって思って。具合悪いなら無理しちゃだめだよ」
「うん」
尚ちゃんはおひさまみたいな笑顔で言った。
その笑顔が今の私には一番辛い。
閉ざした感情が溢れないように必死に抑える。
尚ちゃんは紙パックの飲み物を飲んでいる。
普段はマイボトルを使う尚ちゃんだから、少し気になった。
飲み物ことを聞けば、いい話題づくりになるかもしれない。
「何飲んでるの?」
「カフェオレだよ。いつもは飲まないんだけど、おすすめされたから飲んでみたら美味しくって」
「そうなんだ……」
誰におすすめされたか聞かなくても、尚ちゃんの表情を見れば簡単に分かった。
「美花も飲む?」
そう言ってカフェオレを私に差し出した。
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