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これって…………
間接キス……だよね。
トクトクと早まる鼓動がうるさい。
邪な考えをした自分に自己嫌悪したくなる。
断って不審に思われるのも嫌だし、思い切って飲んでしまおう!
私はカフェオレを受け取ると、震える手でストローを口に付けた。
まろやかな甘さと苦さが広がっていく。
じわっと砂糖が音をたてて、胸の中で溶けた。
「美味しいね……」
「でしょでしょ! それはそうと、美花、今日家行っていい?」
「えっ……」
私は内心、ドキリとした。
尚ちゃんと一緒にいられるのは嬉しいけど、この気持ちがバレたら大惨事だ。
断るにしても、まずは理由を聞いてみよう。
「今日じゃなきゃダメなの?」
「うん。今日、ちょうど部活オフだしさ……あの、その……美花にメイクとか教えてほしいなって思って……」
尚ちゃんは珍しくもじもじして、頬を赤く染めている。
どうしよう……。
尚ちゃんの恋を応援するって決めた。
この気持ちを閉じ込めるって決めた。
それならば……
「うん、いいよ。化粧品メーカー、社長の娘だもの! お安い御用だよ!」
「ありがとう、美花」
お礼を言う尚ちゃんは前よりも可愛くなっていて、何だか胸が痛くなった。
恋は女の子を奇麗にするって、こういうことなのかな……。
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