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消滅日和
わたしは今日も、好きな人がここを通るのを眺めます。
学校から一番近い交差点。
ここを毎朝一番に自転車で横断していくのは、野球部の日下部くんです。
ああ、精悍な顔つき。
引き締まった腕。
たまりません。
制服姿だけど、彼が野球をしているときの姿もまた好きです。
でも、学校だとじっと彼だけを見てはいられないので、毎朝毎夕、わたしはこの建物の物陰から覗いているのです。
朝の一瞬。
それをわたしは見逃しません。
ああ、今日も素敵!!
でもまたすぐに行ってしまいました。
その後は次から次へと他の生徒がやってきます。
次は、夕方ですね……。
夕方になりました。
友人たちと連れ立って帰っていく日下部くん。
ああ、笑顔がとてもさわやかで素敵です。部活の後のちょっとくたびれた感じもとてもいいです。
今日もまた素晴らしいひとときをすごせました。
また、明日も見られるでしょうか。
きっと見られますね。
わたしがここで、見ている限りは。
この「観察」はもう二年半ものあいだ続いています。
でも、彼はもうすぐ卒業してしまうんです。
あと少ししか……ありません。
告白なんか、できません。
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