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「あなたって字綺麗よね。羨ましいな。私筆圧強すぎてすぐノート黒くなっちゃうの」
『お褒めの言葉ありがと。君の落書き、めっちゃ力強いもんね。まるで霊長類最強のような』
「嫌味かしらそれは」
『いえいえ滅相もない』
『前の席の立元って男の身長が高すぎて黒板見えにくくて。あ、俺が決して身長低いわけじゃないから』
「別に身長低くてもいいんじゃない?ちなみに何センチ?」
『君は?』
「158センチだけど」
『あと2センチ足りない……』
「どういうこと?」
『牛乳飲もうかなって』
「お昼ご飯食べた後の授業って眠いよね」
『わかる。俺水曜の六限だからマジ眠いんだよね。けど夕日が眩しくて昼寝できなくて。いい方法ないかな』
「窓側の席だもんね。アイマスクするとか?表に目を書いてあるやつ」
『それだとバレないかな。君が書いてよ。絵上手いし』
「え~上手くないよ。普通普通」
『謙遜しないでよ。可愛くていいと思うよ。俺は好きだな』
また『好き』という言葉にドキっとする。鉛筆で書かれた文字をそっと撫でる。手に黒炭がつき手が黒ずむ。彼の気持ちがそこにある気がして、指で擦ってみる。彼はどんな人なのだろうか。字のように几帳面で真面目な人かな?それともちょっと面倒くさがりでお調子者なのかな?名前も顔も知らない彼に、私は会いたくなっていた。胸のドキドキが、鳴りやまなかった。
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