Prolog 遅延性シンドローム

2/16
55人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
「彼女が出来た!」  僕、世良(せら)優真(ゆうま)の親友である小鳥遊(たかなし)育美(いくみ)にそう言われたのは、高校一年生の夏のことだった。  ここはホームルームが終わったばかりの教室。  育美が大声で言うから、ざわざわとして騒がしかった教室に沈黙が流れて、みんなが僕らの方を注目した。 「そうなの? 良かったね! ちゃんと彼女のこと、大事にしてあげるんだよ?」  そんな沈黙を破って、僕は本心から出た言葉を言った。みんなが見ていて恥ずかしかったから、少し早口になってしまったかもしれない。 「うん……。どうしても、優真に一番最初に聞いて欲しくて……」  育美は恥ずかしそうに頬を赤く染めた。  こんな育美、初めて見たかも……。  いつも、カッコつけて、クールな感じなのに。  恋って、人を変えるんだね。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!