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「ユキちゃん、これ書いて」
雪子ちゃんが転校してきて1週間後、そう言って雪子ちゃんに明美ちゃんが差し出したのは、サイン帳だった。明美ちゃんは友達になった相手には必ずそれを書いてもらっていた。これが私の友達の証よと、よく言っていた。これが100枚たまったら、友達100人達成だもの…と。しかし、雪子ちゃんはキッパリとこう言った。
「書きたくない。聞きたい事があるなら、私に直接聞いて」
「私、これを集めてるのよ。人には見せないから書いてよ」
「やだよ、あんまり個人情報出したくない」
雪子ちゃんがキッパリと断ると、明美ちゃんは怒った。雪子ちゃんの机をバンと叩くと、睨み付けて立ち去った。
「雪子ちゃん、何でそんな頑なに拒むの?サイン帳くらい…」
「あの子、ちょっとドジなとこあるから、いつかサイン帳をどっかに置き忘れそうじゃない?危ないなと思って。そんな事で縁が切れるならそれはそれで良いよ」
私の問いに、ユキちゃんはキッパリとそう答えた。
「春子、そんな奴にかまってないでこっちおいでよ!」
梅子ちゃんの机の前で、明美ちゃんが私を呼ぶ。私は雪子ちゃんを一瞥して、明美ちゃんの方へ向かった。
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