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「俺もアリマも、男であって男ではない。女であって女ではない。昔、両親だった人たちが俺たちに浴びせた言葉だ」
「皮肉よね。私たちね、ゲノム編集によって生まれたの。ゲノム編集で生まれた私たちは、本来有るべきモノがない」
「どうしてこんな風に生まれたのか。そんなことを博士に言ったところで変わりようもない。結局、人工子宮も人工卵巣精巣も生命倫理の前では邪悪なモノにしかならない」
「なら、ゲノム編集で生まれた私たちは邪悪な人間ってことよね。何が生命倫理よ。だったら胎児を人間と見なさずに中絶することの方が邪悪だって言うのに。本当に嫌になっちゃう」
「何にも考えずに己の欲求と快楽のためにばかすか子を産む人間を嫌悪する俺たちがおかしな人間と見られるんだ」
お二人は今までで一番、恨めしそうに息を吐いた。
「なあ、くそ妹」
「ねえ、くそ兄貴」
お二人の息はぴったり。
「報われねえよなあ」
「報われないわねえ」
お二人の表情は浮かないどころか、まるでこの世の終わり、絶望を抱えた様な表情をしておられる。
「博士の人工子宮、人工卵巣精巣の回路実験はお二人の為だったのですね」
博士は数年前からひっそりと研究をされていた。それを私は知っている。
「どうかな」
リョウヘイ様は苦笑されていた。
「どういうことでしょう?」
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