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「あーあ。あーだこーだ言っても仕方ないことはわかっているんだけどね。たまには恨めしくなるのよ、周囲がね。さてと。お風呂入ろうっと」
「お兄様が身体を洗ってあげようか?」
アリマ様は蔑みの眼差しでリョウヘイ様を見た。
「馬鹿阿呆スケベヘンタイ」
「あははは! 冗談だよ」
リョウヘイ様は、どこか名残惜しそうにアリマ様に仰った。
「なあ、アリマ」
「何?」
「アリマはアリマらしく生きろよ。運命に負けるな」
「どうしちゃったのよ? とうとう頭がおかしくなったの?」
「アリマ。俺が兄貴で良かったか?」
「本当に大丈夫? まあ、あんた以外に私の兄貴は務まらないよ。こんなくそ妹の兄貴はくそ兄貴だけ」
リョウヘイ様は嬉しそうに微笑まれた。アリマ様は不思議そうに首を傾げておられたまま、そのまま風呂場へと向かわれた。
「グレイ」
「はい」
リョウヘイ様は、私に向き直られたが、その顔は先ほどとは正反対の表情をしておられた。
「俺さ、この間のアオイが危険に陥った時に怖くなったんだ。アリマも後から聞いて青ざめていたよ」
先日、痛みに鈍感なアオイ様が窮地に陥った後、生還された。
「だからかな。なおのこと、繋がりを求めてしまうんだ。俺もアリマも」
リョウヘイ様は寂しそうに笑っておられた。
「生きる死ぬってことが、こんなに近いものだったんだなって」
「近いもの、ですか?」
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