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真夜中のことだった。誰もいない病院のロビーで、声を押し殺し泣き崩れるアリマ様の隣に、私はただただ立ち尽くすことしか出来なかった。
『グレイ、アリマのことを頼む』
心に穴が開く、とはこういうことなのだろうか。
リョウヘイ様の声を聞くことはもう、二度と叶わないのだ。
『俺とスバル、アオイもエイジもリンタもリョウヘイもアリマも。皆、人間の一線は越えているんだ。グレイ、俺も願ったんだ。だから現在があるんだよ』
ナツキ様、どうしてでしょうか。
『死、とはああいうことなんだよ』
エイジ様、どうしてでしょうか。
どうして人間は、こんなにも呆気なく遠くに行ってしまうのでしょうか。
「グ、グレ……イ……」
「アリマ様……」
「人間は脆いんだね……忘れかけていたよ……!」
「アリマ様!」
「うあああああああああっ!」
静寂なロビーに響く、空虚な叫び。
「どんなに完全を望んでも! それを手に入れることは出来ない! それが、私たち人間なのよ……! うぅ……っ……」
私は何も出来なかった。人工知能ロボットないしAIロボットである私が、一体何を言えようか。
私はただただ、いつかの幼子の手の様に、アリマ様の頬を撫でることしか出来なかった。
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