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「それ、本人言うとグーパンチだぞ」
気の強い嫁は相変わらず腕っ節も強い。「腕が鈍る」と言って休日、ダンに修練の相手をさせているくらいだ。
アルブレヒトは困った顔をしている。行儀悪く肘をついて、考えているようだ。
「彼女はそんなこと、気にしないと思いますけれど。むしろ気が楽だと考えていると思いますよ」
確かに、何の気兼ねもないようすだ。自由に伸び伸びしている感じはある。
日常生活はいたって順調で、互いに気づいた所に手が届く。ずっと昔から一緒にいたような具合のよさだ。
だが夜となると手が出ない。ダンはこれまで商売の女性とは関係があったが、特定の誰かと決めた事はない。健全な男として溜まるものは溜まるし、発散したい時もある。体を動かせば発散されるなんて爽やかな男ではなかった。
そして恋人を作らなかったのは、奔放な自分が特定の女性だけを愛して夜を共にする決心が付かなかったのだ。あちこち行って置き去りにする事だってあるだろうし、その間待たせるのも忍びなく思っていた。
イシュクイナと結婚した時、彼女を幸せにするという覚悟はしたし、二人の生活がどんなものかと楽しみにもした。そして今も幸せだ。
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