夫婦の時間(ダン)

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「だが他国の軍隊が攻めて来た時は、どうにもならなかった。必至に持ちこたえるのが精々で、砦からの騎士も暫くして尻尾巻いて逃げやがって、もうダメだと本気で思ったんだ。そん時さ、アルブレヒト様率いる本隊が来てくれたのは」  もうここで死ぬんだと思った。全員ボロボロだった。そこに差した光はあまりに強くて、眩しくて神々しかった。 「本軍は瞬く間に他軍を打ちのめしてくれた。そして、俺達みたいな貧乏人にアルブレヒト様は手を差し伸べてくれて、分け隔て無く接してくれた。本当に、びっくりだぜ。そこらの一般兵ですら、俺等の事下に見てたってのにな」  『よく頑張ってくれました。貴方達が、この町を守ったのですよ』  そう言って手を差し伸べた人の神々しさったらなかった。不意打ちで、ちょっと泣けた。 「そっから町の復旧やらなにやらして、あっという間に年月がたって。ようやく整った頃、俺達はあの人の私軍という形で召し抱えられた。そっからまた、がむしゃらに。俺達もようやく強くなったってくらいに、例の事件があって俺は片目を失い、主も失い、仲間も失った」  強くなったと思い込んでいたのかもしれない。大きな闇に一人の人間が出来る事はほんの僅かなんだと思い知った。悔しくて、何より自分が許せなかった。 「片目の感覚取りもどしたり、情報拾いながらあちこち転々としたりで、ラン・カレイユまで行って。んで、お前にも知り合った」     
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