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「可愛いさ。なにせ、愛しいと思っている者が妬いてくれるのだから。それだけ、俺の事でお前の中を満たしているということだろ? 恋人として、これほど嬉しい事はない」
「……」
思わず絶句。その後は、顔が火照ってきた。
確かに彼の事ばかりになる。一度考えるとなかなか抜け出せない。その間、確かにレーティスはオーギュストに囚われているということで……
オーギュストの手が伸びて、そっと頬に触れる。乾燥で少しカサカサした指先が頬に触れて、大きく包み込まれる。促される様に僅かに上向いた唇に、柔らかな唇が重なった。
ドキドキと落ち着かないのに、もっと欲しくなってしまう。触れるだけのキスは、とても優しい。もどかしいくらいだ。
彼の胸元を握って、潤んだ瞳で見上げた。もっと先が欲しい。彼とちゃんと触れあったことがない。こちらが望んでも、彼はそれ以上を与えてくれないのだ。
切なくて、苦しくてたまらなくなる。これもずっと悩んでいる。
立ち上がったレーティスは暖炉の前で服を脱いだ。一枚一枚、見せつけるように。ギョッとして声をかけるオーギュストを無視して、やがて一糸まとわぬ姿になる。恥ずかしいが、それ以上にこの衝動をどうにかしたい。脱ぎ散らかした衣服を跨ぎ、レーティスはオーギュストの側に膝をついて深いキスを求めた。
「愛しいと言うなら、体でも示してください」
「レーティス」
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