思いがけない再会(キフラス)

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 ここへの赴任は皆が嫌がり、ダンが「行こうか?」と言いだした時、キフラスは迷いなく着くことを伝えた。辛い肉体労働で、気も使う割に合わない仕事だろうが、償いなのだからこれでよかった。  夜が明ければ新年という夜、キフラスは変わらず砦の執務室で書類に目を通していた。掛かった経費の精算や、入ってきた物資の書類。不満や嘆願の陳述書。作業リーダーの日報と、作業の進捗を知らせる報告書。  それらに目を通していると、不意にドアをノックする者があった。 「はい」 「失礼します」  そう言って入ってきたのはバルンという青年だ。元は宰相ナルサッハの懐刀をしていた青年だが、彼自身は武力は多少という程度。どちらかと言えば人を使う事に長け、全体を把握する指揮系統に優れている。ここにはそうした才能が必要と判断し、彼自身もここに着くことに異論が無かった為に補佐としてつけた。 「どうした、バルン」 「どうしたもこうしたも、夕食お持ちしたってわけですよ。うちの将軍様は放っておくと寝食忘れるんで」  見れば外は相当暗くなっている。そういえば、手元のランプはいつつけたか。 「すまない」 「いいですけれど。今日はちょっと趣向を変えて、外の屋台で買ってきましたよ」  そう言って彼が出したのは、野菜と肉が沢山挟まったサンドイッチに、温かな湯気を上げるコーンスープ、そしてサラダだった。     
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