思いがけない再会(キフラス)

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「帝国側の店で、手軽だけどボリュームあるって兵士に人気でしてね」 「そうか」  なんだか、懐かしい感じがする。帝国でハムレットに匿われている間、郊外のあの町で自警団にいた。あの時によく食べていた物に似ている。  仕事の手を止めてバルンと二人ソファーに移動したキフラスは早速サンドイッチにかぶりつき、目を丸くした。続いてスープを、そしてサラダを。咀嚼して、飲み込んで、立ち上がった。 「この食事を出している屋台はどこだ?」 「え? あっと……帝国側の砦の近くにある店で、女性が一人で切り盛りしてますが……なんかありました?」 「……知り合いかもしれない」  この味と、これを持ってくる女性を覚えている。ほぼ毎日のように顔を合わせていたのだ。そして、別れもろくに言えないままに出て来てそれっきりだった。 「そういう事なら、呼びましょうか? その店、閉店早いんで今頃店じまいですよ」  腰を上げたバルンはさっさと出て行ってしまう。自ら行こうとしていたキフラスが止める暇もない。ゆったりしているくせに、いつの間にか動いている癖のある部下だ。     
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