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差し入れられた夕食を食べ終わった頃、ドアがノックされてバルンが一人の女性を連れてきた。金の髪をおさげにした彼女は緊張した面持ちで立っていたが、キフラスを見た途端にぱっと青い瞳を輝かせた。
「キフラスさん! え、あの……」
「ビアンカ、やはり君だったのか」
久しぶりに会った彼女は頬のそばかすも薄くなって、女性らしくなっていた。けれど浮かべる表情は知っているもので、思わず懐かしく嬉しくなってしまう。
「んじゃ、後はごゆっくり。帰りはキフラス様送って行ってくださいね」
「あ、こら!」
気の抜ける声で言ったバルンがパタンとドアを閉めてしまい、残された二人は少し居心地が悪い。互いにソワソワと様子を伺う感じだ。
「とりあえず、掛けてくれ。お茶を淹れる」
「あっ、それなら私が」
「いや、大丈夫だよ」
ソファーに彼女を座らせ、お茶を淹れて対面に座る。緊張した面持ちの彼女がぎこちなくお茶を飲むのを、キフラスは見ていた。
「すまない、突然。君の作ったサンドイッチを食べて、もしかしたらと思って部下に話したら連れてくると言われてしまって」
「あっ、いいえ! ちょっと驚きましたけど」
ぱっと手を胸の前で振るビアンカの頬はやはり赤い。あの別荘地で接した彼女そのままの表情に懐かしく、自然と頬が緩んだ。
それを見たビアンカの顔が更に赤くなっていくので、キフラスはちょっと心配になったくらいだ。
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