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「キフラスさんは、ジェームダルの騎士様だったのね」
「……あぁ」
不意に沈んだ声で言われ、言葉に多少詰まる。ジェームダルが帝国にした事の大きさは理解しているつもりだ。だからこそ、キフラスも言葉が重い。
「すまない、騙すような事をしていた。本当なら何を今更、のこのこと顔を出しているんだと言いたいだろうが」
「あっ、そういう事じゃなくて!!」
慌てて否定するビアンカに、キフラスは首を傾げる。罵られても仕方がないと思っていたが、どうやら違うらしい。
彼女は少し恥ずかしそうにしながら、ちらちらとこちらを見ていた。
「遠い国っていうから、どこだろうと。北のクシュナートとは特徴が違うしって。遠いって、どのくらいかなって思っていたんです」
「あぁ、そういう事か」
当時交戦一歩手前だったせいで、国名を明かしていなかった。
「ジェームダルなら、案外遠くないですね」
ニパッと屈託なく笑ったビアンカの明るさに、キフラスも自然と微笑みが浮かんだ。
「そう言えば、君はどうしてここに屋台を?」
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