思いがけない再会(キフラス)

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「出張所? です。丁度お店も落ち着いてるし、期間限定で店を出してみたくて。他にも女性が多くお店を出してるって聞いてきたんですけれど、私勘違いしてしまっていて。他の女性って、夜のお仕事の方だったんですね。私、驚いてしまいました」  本当に困った顔をして言うビアンカに、キフラスは額に指を当てて軽い頭痛を感じる。  前から少し前傾姿勢な部分はあったし、思い込んだら突き進む女性ではあった。だがまさか、前線の兵士を相手にする娼婦を「店を出したい人」と思い込んでいたなんて。  いや、これは笑い事ではない事態だ。帝国の騎士がそんな無体を働くとは思えないし、現在統制を取っている自軍の人間が商売の女性以外に手を上げる事は考えたく無い。だが、そうじゃない一般人もいる。ここには店を出す人間も、大工やなんかもいるのだ。  それに、店をしている女性も娼婦の女性も見分けがつかないと言われたらどうにもならない。間違いがあってはならない。 「あの、キフラスさん?」 「君は……今は誰かと一緒に行動しているのか? 誰かと一緒に来ているのか?」 「え? いいえ。帝国の騎士様に、夜の九時前には店を閉めて帝国側の砦で寝泊まりするようにと言われていますが」  これでも精一杯のバックアップを、帝国側がしてくれているようだ。 「何か危険な事とかはないか? しつこく言いよられているとか?」     
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