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「まさか、私がですか? ありませんよ、私みたいな普通の娘に。みんないい人で、毎日顔を出しては冗談みたいに「今夜オレとどうだい?」なんて事は言われますけれど」
「……」
しっかり誘われている。冗談と思っているが、冗談じゃ無かった時が怖い。
「……他には?」
「? 来てはお花を持って来てくれる人とか、終わりの時間を聞かれたりとか、「彼氏はいるの?」と聞かれたりとか……」
「思いきり誘われているだろ。危険はなかったのか?」
「買い付けの時に触られた事はありますけれど、明るかったのでちょっと騒いだら逃げていきました」
「危険だ!」
本当に、どうしてその状況でこんなにも危機感がないんだ。
「……買い出しの時間は、だいたいいつだ?」
「え?」
「心配だ。君にはとても世話になった、何かあってからでは遅いし、心苦しい。夜間外出する時も、事前にわかっていれば声をかけてくれ。さっきの男、バルンというが、あいつに声をかければ俺に繋がる。同行しよう」
「え! そんな、悪いです! お忙しいですし」
遠慮する彼女だが、これでは気になって仕事どころじゃない。
「丁度部下からもデスクワークが多すぎると言われていたんだ、散歩程度の事だから気にしないでくれ。ついでにこの場を見回れるから一石二鳥だ」
「でも……」
「ビアンカ、頼む」
言い募ると、彼女はすごすごと予定を教えてくれた。
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