思いがけない再会(キフラス)

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思いがけない再会(キフラス)

 かつての帝国との国境だったラジェーナ砦は、今は争いの様子は見られない。ここで多くの人が亡くなったとは……一国の王だった者が葬られたとは思えない賑わいとなっている。  この地は戦争賠償の一つとして帝国へと渡ることになり、砦はその機能を失った。早急に武器の類いは砦から取り払われ、今は建物だけが残っている。  簡易に作られたキルヒアイスの処刑台も撤去された。  帝国は砦は残すものの、軍は僅かな警備程度にしか置かないらしい。そのかわり、この地は大きな教会が建つ予定だ。それだけ、ここでは多くの人が死んだ。  ラン・カレイユから連れ出された武力をほぼ持たなかった人、軍神に挑み一瞬でその命を奪われた人。そして一度は権力を手にした暴君。あまりに多くの念を抱えた地だ。  ここに建つ教会は、そうした人々の魂が安らかであるようにと祈りを込めるそうだ。  現在その下地を作るべく、ジェームダルの兵士や帝国の騎士、一般の大工や、この地に集う人々を相手にする商人、そして手伝いにくる人々と賑やかになっている。  広い土地は簡易のテントや小屋、砦の一部も開放して、そうした人々を受け入れている。     
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