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銀行強盗って言うのは、映画で見るような目のくり抜かれているニットを被ってくるような輩はそういない。
もっと一般人に紛れ込んでくる。私がその日あったやつはスーツに眼鏡。行内を歩いてた銀行員に耳打ちをしてポケットに何か入れてた。その時の銀行員の顔。青ざめてた。
番号待ってて、やっと順番が回ってきた時。初めて銃声が聞こえた。
そして全員縄で縛られた。入り口の方には死体が一つ。
逃げようとした人が銀行強盗の躊躇なき玉に撃たれた。
約五分。たった五分でただの銀行は映画のスクリーンの中に。そして私達は誰の役になるのか。殺され役のエキストラ。怯えており最終的に射殺される役のエキストラ。銀行強盗に果敢に襲いかかるも返り討ちに合うエキストラ。
何故だろう。私はここで死ぬと確信してた。せっかくの命って言うなら。ここに居る数十人助けて死ぬ命になろう。
まだ警察は気づいてないかもしれない。このままじっとしてたら私達は助かるのか。
いや。
「おい。お前ふざけてるのか」
銀行員の一人が隙を狙って非常ボタンを押した。
そしてすぐに拘束された。
真のヒーローは私ではなかったようだ。
「あと何分かかる」
「分からない。最低でもあと10分かな」
警察もしくは警備会社の突入は10分も待ってくれないだろう。
ここまで冷静かつ冷酷な男がイライラし始めた。そして糸が切れる。
「やっぱお前は殺す」
私の隣にいた、勇敢な銀行員が頭に銃を突きつけられる。
驚いた表情の銀行員。
時がスローモーションになる。
私はチャンスを得た。今こそ死に時。私の人生の潮時。
銀行員が目を見開いたままこっちを見てくる。
私はその目に笑みを見せる。
銀行員を押し倒すように玉を喰らいに行く。
「バンッ」
本日二度目の銃声は私の耳に届いた。
そして私は生きていた。
私が彼を押し倒した時。同時に銀行員の彼は玉を避けようとした。その時私が邪魔で避けれなかった。
彼は私の膝に寄りかかるように亡くなった。彼はこっち向いて笑ってた。気持ち悪い笑み。
私は何度もこの光景を思い出す。
彼が仮に避けてたら。その先には椅子。でもなく、床。でもなく、壁。でもなく私がいた。
真実はわからない。
とにかく私は死ねなかった。
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