引越し蕎麦を渡すまで

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「はーい、どなたですか?」  柔らかい。  まさに柔らかいとしか言いようのない透きとおった声がして、部屋のドアがガチャリと開いた。 「……誰?」  そして、顔をのぞかせたのは、中性的な顔立ちをした、ハッとするほどのイケメン男だった。  俺はおもわず、あんぐりと口をあける。  あれ?  これは……なにか違うくないか?  幼女誘拐犯なんだから、小太りでメガネをかけてて、みたいな奴をイメージしてたのに、全然違う。(全国のメガネをかけた小太りのお兄さん。すいません)  どこをどう切っても、爽やかな匂いしかしなさそうなこの姿。態度も堂々としてて、悪さをしてるところを見つかった、みたいな雰囲気は皆無。どう見ても幼女を誘拐するようには見えない。 「えっと……どなた…ですか?」  男が小首をかしげると、ふわりと癖のある髪が揺れた。  なんか、モデルみたいだ。  おもわず見惚れてしまいそうになる。 「あ、えっと……夜分すいません。俺……隣の……」  毒気を抜かれてしまい、しどろもどろになってしまった俺を見て、その男の表情がぱあっと明るくなった。
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