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「晶さん」
カラフルに染まった晶さんの顔を上げさせて覗き込む。
暴れて少しは気が晴れてくれたのか?
大人しくなった晶さんはやっぱり未だ、俺から目を逸らしてくれる…
微かに俯いた晶さんの動きを止めるように俺は半ば強引にキスをした。
仲直りできるきっかけになるならなんでもいい──
そう思いながらも重ねた唇に晶さんはいっこうにその気になる気配を見せてこない。
「いや?…」
「………」
口さえも開かず、晶さんは無言で頷いた。
なんか切ない。苦しいため息が漏れて調味料まみれの顔を擦るように撫でながら頭を抱える。
控え目に嫌がる晶さんに結構なショックを受けてる自分がいる。
今日に限って強引にセックスに雪崩れ込むことが何故かできない──
「どうして嫌?…」
こんな時にこんな質問、尚更嫌がるって思うのにどうしても訳を知りたい自分がいた。
更に顔を覗く俺から晶さんはもっと目を伏せていく──
「もしかして嫌いになった?…」
冗談混じりに聞きながらかなりビビって頬が牽き吊る。
「ねえ……晶さん…何か言って?」
せめて言葉を交わすだけでも…
そう願う俺の前で晶さんは無言の唇を更に強く結び直していた……
もうため息つくしかない
晶さんの顔を服の袖で拭いてあげながら機嫌を取るようにまた顔を覗き込む。
おどけて笑って見せて
優しく顔をつねってみて
なんとか晶さんの反応を引き出そうとして不意に“もう無理かも”なんて感情が沸き上がった──
「晶さん…だめだからね……」
この言葉だけで何を牽制したかわかった筈だ。目を見開いた晶さんをゆっくり抱き締める。
小さな頭を包むように抱いて、短い髪から覗く白い耳たぶに口を寄せた。
・
「だめだよ…ここを出ていくのも俺から離れるのも……」
後頭部を包んだ手のひらで晶さんの髪を揉むようにゆっくり撫でる。
「晶さんは俺のだから……勝手に出ていったら許さない」
ここまで俺に執着を持たせたのは晶さんだから──
お願いだからこの腕の中で大人しくしていて欲しい。
脅してでも何をしても──
手離すことだけはしたくない
そんな想いが通じたのか…
晶さんは顔を上げると今度は俺を真っ直ぐにその瞳に映し、固く結んでた口を開く。
「……そんなことっ…わか…ってるから…」
「………」
言って真っ直ぐに見つめ返した俺から晶さんはまた目を逸らした。
俯いた晶さんをそのまま胸に抱き締める。
今、追求してはいけない
そんな警笛が鳴り響く。
天井を仰いで息を吸うと、抱き締めた晶さんの肩に顔を埋めた。
こと切れたように強い息が漏れていく
「よかったー…っ…嫌いになったらどうしようって焦った…っ…マジ焦った…っ…」
「………」
抱き締めて揺れながら、追い撃ちの呪文のように俺は繰り返した。
小さな迷いも無視できない。
腕の中の晶さんからは今だ、躊躇う心が窺える。
バカして脅して甘えてもう手は出し尽くした…
これでも晶さんがまだ何かを思うなら……
俺はこの先どうしたらいいんだろうか──
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