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マリオに助けられながら、撮影は順調に進んでいく──
「気負わなくていい。カメラマンはプロだ。向こうが君のいい表情を見つけて撮っていくから」
身体が近づく度にそう助言される。
「じゃあ、あたしは何をしたらいいの?」
「何をって?」
逆に尋ねられて頷き返したあたしにマリオはふと真顔になった。
真っ直ぐに見つめ、腰に回ったマリオの腕が急にあたしの身体を抱き寄せる。
眩く射す夕陽の射光。二人のシルエットが絵画のように浮かび上がるとマリオはさらに顔を近付けた。
「僕のことを愛しいと思えばいい……」
「──……」
マリオが口にした言葉と表情に違う緊張が走った。
「わかった?」
「は…い…」
もう、そう返すしかなかったあたしの耳に撮影終了の声が聞こえてくる。
真顔で言われた台詞にすごくドキドキしてしまった……。
結婚式の撮影だからマリオが口にしたことの意味はわかってはいるんだけど。
「だけど…あんな顔で言うのはやめて欲しい…っ…」
背を向けてブツブツ呟くあたしの肩をマリオが叩く。
「お疲れ様。いい映像が撮れたみたいだよ」
振り返るとカメラマンが腕で丸を作って笑顔を向けていた。
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