25章 予測不能のシナリオ

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・ 勢いに乗ってなんとかなったみたい。。。 今日の撮影はこれでお仕舞いになる。 スタッフから渡されたパーカーをドレスの上に羽織り、あたしは一息吐いた。 陽が沈み、空は瞬く間に暗くなっていく。 あたしは辺りを見回して夏希ちゃんの姿を探した。 さっきまで座っていた場所にはもう居ない。控室に戻る前に声でも掛けようと思ってたのに。そう思いながら何かが胸の奥に引っ掛かっていた。 普段の夏希ちゃんなら終わるまで待っていてくれて、真っ先に駆け寄って来てる“はず” それも撮影が終わったと同時に── そう思い込んで疑わない自分と胸騒ぎを見過ごそうとする自分がいた。 無言で佇む肩を誰かに叩かれる。 「戻って着替えないと…それともドレスが気に入った?」 覗き込むように腰を屈めたマリオが聞いてくる。 暖かい上着を着ていれど、冷たい風で頬が突っ張る。マリオに付き添われるように館内に戻るとあたしは控室に足を向けた。
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