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「お疲れ様」
「あ……」
控室に入ると先に帰り支度を済ませた舞花がいた。
挨拶を先にされ、つい戸惑いの声が漏れてしまう。
同じ控室でうげっと思ってはいたけれど、撮影入りの時間がずれていたお陰でさっきは顔を会わせずに済んだのに。
横を向いてチッと舌を打ち、小さく挨拶を返してドレッサーの前に座ると舞花は鏡越しにちらりと目線を向けてくる。
「どうだった?……マリオとの撮影は……」
腕を組んで何故か勝ち誇った顔でそう聞いてきた。
「…何とかこなせたかなって感じです」
仕事としてこの場に居るなら相手は一応事務所の先輩になる訳で。
ムッとした気持ちを抑え、鏡越しの視線を無視してメイクを落としに掛かった。
「…よかったじゃん」
薄い笑いを浮かべたその顔付きを見て、あたしの口調にも剣がでた。
「よかったって何が?」
「マリオが上手くリードしてくれて。」
「………」
「下手な素人でもそれなりに撮ってもらえたみたいだし……」
「………」
「でも、やっぱあまり見れたものじゃないからこれっきりにしたほうがいいと思うけど…」
「──……」
なんだろうか……
業界特有の新人イビリってやつ?
両目の付け睫を外されて、ふとメイクさんと目が合った。
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