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“落ち着いて”
動きを止めて、しきりに目配せを送るメイクさんの仕草はそう言っている。
うん、わかってる。
落ち着いてるつもりではいる。
素人であるあたしに仕事を獲られた上に、今回のモデルだってマリオがあたしを指名したその“おこぼれ”みたいなものだ──
悔しくて仕方ない気持ちはわからなくもない。
今日の撮影だってあたしとマリオの撮りがほとんどだったわけだし…。
「……そうですよね? あたしも素人だし、そう“毎回”この仕事に呼ばれても本業の方があるし……」
「……っ…」
「次にまた依頼が来たら、先輩にお譲りします。先輩お暇、ありそうだから」
ニッコリ笑って余裕でそう返した途端だった──
椅子から立ち上がった舞花からいきなり平手打ちを食らった。
驚きと痛みは一瞬で消え失せる。
怒りが沸き上がると同時にあたしの手のひらも舞花の頬を思いきり弾いていた。
メイクさんが傍らでおろおろしながら何か叫んでる。その声を聞いて外で待っていたであろう、楠木さんと夏希ちゃんが控室に飛び込んできた。
「ちょっ…二人とも何してっ…」
掴み合った体を男二人に力づくで引き剥がされる。
興奮したまま肩で息を切りながら、仕返しし足りないあたしの口から溢れた毒はもう止まらなかった──。
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