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不思議だ──
今までコンプレックスなんて感じたこともなかった。
それなのに……晶さんと並んでバランスのとれたマリオのそのスタイル。それはあの蒸し暑い夏の日に、花火が散った高層デパートの屋上で目にしてしまったあの男を思い出させる──
晶さんと手を繋いで夜空を見上げていた元、恋人。
別れて晶さんがボロボロになった初めての男──
高槻とマリオは背丈もそっくりだった。
「あー…すごい嫌なこと思い出した……」
ボソッと呟く俺を隣の椅子に腰掛けた舞花が振り向く。
男ってほんとちっちゃい。
自分がこんなに過ぎたことを気に掛ける奴だって気付いたこともショックであり、何気にあの時の晶さんの裏切りが深く根付いていることを思い知らされる。
俺は前の二人から目を逸らした。
「可愛いドレスだねそれ…」
「ほんと? 似合う?」
晶さん達を気に掛けないように舞花に顔を向けて話し掛ける。
「似合うよ」
俺の作り笑いに舞花はホントに嬉しそうに笑って見せた──
「………」
頬を綻ばせた舞花を何気に見つめる。素直な笑顔は確かに可愛い。。。
晶さんもこんな笑みをたまには見せてくれればいいのに……
俺に好かれようとして必死な笑みを──
クールで意地悪なとら猫は今だ尻尾で俺をたはき返す。
そんな図が浮かんで尚更切ない溜め息が俺の口から漏れていた……
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