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「少し時間貰うから、その間にリラックスして」
「ふぁい…っ…」
真正面から覗き込むマリオに両頬を手で挟まれて、リラックスどころか不細工な顔で返事を返す。
マリオはそんなあたしをジッと見つめると急に吹き出していた。
「悪いね…っ…」
「いえ……どうぞ心置きなく楽しんでください…」
ククッと笑いながらマリオは自分の目尻に滲む涙を軽く拭う。
ほんとに悪いと思ってるんだかの追及は止めたほうが無難かもしれない。。。
日没は刻々と迫ってくる──
現場には冷たい風が吹き、春を前にして冷え込みが一番強くなる時期でもある。
ドレスから露になった肩を思わず庇うとマリオの大きな手がそれを守る様にそっと重ねられていた。
「ありがと…」
見上げて短く伝えると不意に風で靡いたベールが顔に張り付く。マリオはそれを後ろに捲り上げていた。
「この眺めは北海道の撮影の時と似ているな」
マリオは懐かしむように口にして遠くを眺めた。
確かに似ていなくはない。なだらかな斜面、芝生の丘から覗く夕陽。空は赤く染まり始めている。
寒い外で食べたカップラーメンは結構美味しかった。
そう思い出したあたしの腰に、不意にマリオの腕が回されていた……。
かと思ったら急に高く抱き上げられる。驚いたあたしをマリオは小さな子供あやすようにくるくると振り回し始めていた。
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