1章 捨て猫のミィと、拾ったホスト

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1章 捨て猫のミィと、拾ったホスト

「302号室の比良坂(ひらさか)さん、来週末までには契約更新料を支払ってくださいね」 階下に住む大家さんに家賃を届けに行ったら、そう言われて、 「……すいません。もうちょっと待ってもらえませんか」 と、頭を下げる。 「……もう、待てませんから。数ヶ月も前から再三言ってるのに、きちんと更新日までに支払っていただけないのなら、速やかに出て行ってもらうことになりますからね」 「……でも、今はそんなに用意ができなくて、だからこうして家賃も手渡しでと思って……」 と、さらに頭を低くする。 「家賃だって、期日が遅れてるんですよ。うちは、25日払いが決まりなんですから。その上、更新料も払ってもらえないんじゃ、来週末には本当に出て行ってもらいますからね!」 「…えっ、いや、それはちょっと困っ……!」 言い終わらない内に、鼻先で玄関のドアがバタンと閉められた。
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