1章 捨て猫のミィと、拾ったホスト

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ミルクを飲んでひと息をついていると、 「ところで、おまえって、なんであんなところに捨てられてたの?」 と、まるで本当に拾った猫にでも聞くような口ぶりで聞かれた。 「……捨てられてたわけじゃないけど……」 彼を近くに感じると、メンズコロンにお酒とタバコの入り混じった匂いがクン…と香った。 「……ちょっと、住んでた部屋を追い出されただけだし……」 あんまり思い出したくもなくて、顔をうつむけて喋ると、 「……追い出された?…って、やっぱ捨てられたのといっしょじゃん」 と、ククッと口に拳をあてて笑われて、人の不幸がそんなにおもしろいのかなと感じる。 「……でも、俺に拾ってもらってよかっただろ。ここには、おまえの好きなだけいていいからさ」 言って、またニッと笑顔になる。この人って、笑うとちょっと印象が変わる……きつい顔が柔らかくもなって、なんていうか人懐っこくもなるんだ……。 「…うん…ありがとう」 笑った顔を見ながら、その表情は嫌いじゃないかも…と少しだけ思った。
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