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「食べたいもんとか、なんかあるのか?」
「……わかんない」
お腹は減ってるのかもしれないけれど、そんなに何か食べたいものとかがあるわけでもなかった。
「わかんないって、なんだよ? 自分の食べたいものもわからないのか? 」
「…うん」と、頭を縦に肯くと、
「……やっぱ変な奴」と、呆れた顔をされた。
「じゃあ、どっか外に食べに行くか」
「え…いい…そんなの……」
住まわせてもらってるだけでも悪いのにと断ろうとすると、
「……猫が、気ぃつかうな。飯ぐらい、いくらでも食わせてやるよ」
抱き寄せられ、頬がくっつけられて、
「……ちょっと着替えるから、待ってろ」
と、耳に唇を寄せて言われた。
そんなたいしたことじゃないのに、なんでわざわざ耳元で声をひそめるんだろう……。
「ん…」
唇の付けられた耳が、くすぐったく感じるのに……。
……からかわれてるような気もして、もしかしたら猫とじゃれてるような感覚なのかもとふと思った……。
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