715人が本棚に入れています
本棚に追加
「……食べ終わったか?」
「…ああ、うん」
お皿にフォークを置くと、
「じゃあ、俺もう行くから。あと、これで服とかいるもん適当に買っとけよ」
と、テーブルにお札を数枚置かれた。
「いい…こんなの…」
返そうとすると、
「遠慮とかすんな。猫は、おとなしく飼われてればいんだよ」
と、頭をぽんぽんと叩かれた。
伝票を取って、行こうとして、
「ああ、鍵も渡しとくから。俺が帰って来たら、ちゃんと開けろよ?」
鍵を手の平に乗せられて、ニッと笑顔を向けられた。
お店を出て、振り返りもしないで歩いて行ってしまう。
「……やっぱり、冷たいかも…」
さっき見せられたにわかなやさしさに、ニッと笑った顔、そうして振り向くこともない背中と、どれが本物の彼なんだろうと思った……。
最初のコメントを投稿しよう!