第2章

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「元気にしてたかい、マイ・エンジェルたちッ!」 「ハグ待ちです」と言わんばかりに 両腕を大きく広げる、晋一(へんたい)さん。 とても50代とは思えない、若々しく端麗な顔立ち。 少し白髪が混じった艶やかなオールバックが、大人の色気を醸し出している。……黙っていれば、の話だが。 「シンイチッ」 何故か抱き合っている晃と晋一さんを尻目に、俺は副会長におずおずと尋ねる。 「……あの、理事長は此処(りじちょうしつ)に居るんですよね? 入らなくてもいいんですか…?」 「…え?理事長なら目の前にいるではありませんか」 は……?目の前…?どこどこ?? 理事長室付近を見回すが、三人以外には特に理事長らしき人物は見当たらない。 もう一度、理事長の居場所を確認しようと口を開きかける。 と同時に、何処からかゴホン、とわざとらしい咳払いが聞こえた。 それが聞こえた方向を見やると、そこには 目に大粒の涙を溜めた晋一さんの姿があった。…まさか。 何かを察したらしい副会長が、やれやれ、とでも言いたげな溜め息をつきながら説明してくれた。 「……こちらの方は、この冷泉学園の理事長です。 貴方がたの叔父にあたると話を聞いていたので、既にご存知だと思っていたのですが…」 あっそうですか。なるほどね。…って、はああっ!? 晋一さんがり、りじちょうっ!? 「グスッ、……まあ、立ち話もな″ん″だから、…ズズッ、中に入っでぐれ″……」 鼻をすすりながら理事長室へと消えていく晋一さんの後ろ姿は、大きな扉のせいか、なんだかとても小さく見えた。
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