第2章

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「よく来てくれたね、エンジェッ……一葉、晃」 長い指を絡ませ、嬉しそうに目を細める晋一さん。 あれから、なんとか気を取り直した晋一さんは、俺たちを黒革の品あるソファに座るよう促し、自分は理事長室の奥にある大きな椅子に腰掛けた。 幸い、嫉妬で目をギラギラにさせていた副会長は、理事長室の外で大人しく待機している。ほっ。 と、まあこの流れから、晋一さんが理事長だということは十分認識できた。さて… 「晋一さん、今のこの状況を17文字以内で説明してもらえませんか」 横目で晃を見ながら ただし、句読点も含む。と無表情で問えば、晋一さんは真剣な表情で頷き、考え込むように腕を組んでみせた。え、本気(マジ)ですか。 「晃は私の甥で、一葉の従兄弟だよ。」 急いで晋一さんの言葉を漢字に変換し、文字数を数える。…16文字。此奴、なかなか出来る。 …じゃなくてっ!!従兄弟(・・・)だってえ!? 俺の母さん側の人間は、今の時代 珍しいほどの大家族で、兄妹だけでも母さんを入れて6人は存在する(父さんは一人っ子)。 そんな人たちが次々と連れて来る子と言えば、どういうわけかみな女の子で、「年が近い従兄弟」という存在に憧れを抱いていたことがないと言えば嘘になる。…だが、しかし。 あまりにも急過ぎやしないか。俺なんて、晋一さんが理事長という職に就いていたことさえ知らなかったのに。 ついでに言えば、晃なんていう従兄弟が居るのも、全くの初耳だった。ちょっと傷付いてんだぞ、これでも。 それに、俺がこの…こんなイケメンと従兄弟…? 信じられない。 本当に血が繋がっているのだろうか。 「晃は数日前まで外国を転々としていたからね。一葉が知らなかったのも無理は無い」 晋一さんが言葉を続ける。 だが、そんな言葉も 俺の耳には全く入ってこなかった。 気持ちを落ち着かせようと、喋りたくてうずうずしている晃の方を見やる。 そんな俺に何を思ったか、晃はニッと効果音のつく笑顔を見せた。 「よろしくな、一葉っ!」 あはは、耳痛い。 顔と声量が全く合っていない。 でもまあ、たった一人の従兄弟(・・・)なわけだし、と、取り敢えず力のない笑顔を貼り付ける。そんな俺たちを、誇らしげに見守る晋一さん。
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