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ズッシャァァァァッ
今時、漫画とかでしかそんな擬音聞かないぞ、と軽く文句を言いたくなるほど典型的な音を立てて、けむくじゃらのものが二つ、上から覆い被さってきた。
くそ、記念すべき青春の第一歩踏み外したじゃねーか。
俺はまだ状況が掴めていない頭を奮い立たせ、冷静にそれがが落ちてきたところを眺める。
そこには、立派な樹木があった。肉眼で見る限りでも8m以上はあり、とても人間が登れるような高さではない。
もし落ちてきたとしても、普通の人間ならば軽傷を追うほどだ。
そこまで考えたところで、ふと俺に覆い被さるようにして動かないそいつ(よく見ると気づいたんだが、けむくじゃらの一つは人間らしい)に目を落とす。
こいつ……
「…え…生きっ…
いき……死んでる…?」
恐る恐る そう尋ねると、そいつの手がピク、と僅かに動いた。
…あ、よかった。生きてた。
取り敢えず無事が確認出来てほっと胸を撫で下ろしたところで、そいつは急にガバッと起き上がった。
「う、うおおおおおおおおっ」
いきなり発狂し俺の顎に渾身の頭突きを食らわすけむくじゃらの片割れ。(これからは毛玉1号と呼ばせて頂こう)
ガツンという鈍い音がした。
……あまりの痛さに呻く俺に見向きもしないこいつは、果たして同じ人間なのだろうか。
それに、叫びたいのはこっちの方なんだが。
頭突きの威力と、辺りに鳴り響くキンキン声に、思わず眉を顰めた。
「あ…あの「おい、無事かーっ!?」
毛玉1号は、俺の言葉を遮ってもうひとつのけむくじゃらに声をかける。
__泣くぞ。そろそろ泣くぞ。
すると、けむくじゃらは毛玉1号の腕の中でモゾモゾと動いたかと思うと、小さく顔を出し ん に゛ゃあ、と太々しく鳴いた。
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