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「俺の握り方もだいぶ上手くなってきたろう?」
「……味は美味しいですが、握るのはもう少し特訓が必要じゃないですか?」
そうかなぁと少し不服そうに呟く彼。
公園のベンチに二人。
ポカポカ陽気で今日はおにぎり日和。
私の隣で拳みたいにデコボコしたたぬきおにぎりを食べている宇治原くんは中学生の時の同級生。
当時から私の事を『ダイフク』と呼び、頬をつまんではからかってきた。
そんな彼の事を私はずっと苦手だった。
先日、それは誤解だと謝られ、わだかまりが消えたと同時に、私の中では新たな気持ちが芽生え始めたばかりだった。
時々彼の距離の近さに悩まされることもあるけれど、今はこうしてお昼休みにお弁当を一緒に食べる仲になった。
だからといって、それ以上の関係を望んではいけない。
彼の近さに時々勘違いしてしまいそうで、自戒を込めて暗示の様に言い聞かせる。
『コレイジョウ、カレヲ スキニナッテハ イケナイ』
いつかはこの関係も終わる。
深入りしすぎてはダメ。
だから、彼と会う時以外は彼の事を考えない様にと心掛けていた。
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